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2023年3月15日 (水)

思考力問題って?

文部科学省の掲げる高大接続改革

学力の定義を…

1.知識・技能

2.思考力・判断力・表現力

3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

と定めました。

その中でもフォーカスされてるのが「思考力」

これは大学入試共通試験で採用されている為、それに連なる高校入試にも反映してきています。

今年度の神奈川県公立高校入試の問3(ウ)がその典型でしょう。

詳しい内容は2/20に書いた「神奈川県 公立高校入試 数学②」に書いています。

公立高校入試に出てくる以上は、各中学校の定期テストでも意識して出題すべきなのですが、そもそも私たちは学校の先生も含め「学力」=「知識・技能」で育った世代。なかなか対応するのが難しいですね。

私が今、気になるのは、多くの中学校の先生が「思考力問題」=「会話文を聞いて考える問題」と勘違いしてる事です。

それは問題の出題形式を「文章」から「会話文」に替えただけであり「思考力問題」とは呼べません。

今回の有馬中の学年末試験の2年の数学がまさにそんな感じでした。

では問題を例に話を進めます。

問11

Aさん体育の授業で陸上競技用のトラックをグラウンドにかいています。次の会話は、どのレーンもゴールする場所が同じになるように、スタートの位置を調整するため、各レーンをどの程度調整すればよいのか、AさんとBさんが話し合っている様子です。この会話を聞いて後の問に答えなさい

A「直線部分の長さはどのレーンも同じだから、2か所の半円部分を組み合わせた長さを比べて、その差だけ調整すればいいよね」

B「どの走者もレーンの真ん中を走り、最も内側にある第1レーンの半円部分の半径をrメートル、どのレーンの幅も1メートルとしようか」

A「えっと、それだと円周の長さは直径×πだから、例えば第4レーンは( ① )だけ前に出すように調整すればいいってことか」

B「いちいち計算するのは面倒だから、第aレーンの調整する距離をaを使って表して、そこに代入することにしよう」

A「第aレーンの調整する距離は…( 2 )と表せる

( 1 )①に当てはまる式を答えなさい

( 2 )②に当てはまる式を答えなさい

<解>

(1)

第1レーンの2か所の半円部分の距離は、レーンの真ん中を走るから2×π(r+1/2)…①

第4レーンは第1レーンの3メートル外側を走るので、2か所の半円部分の距離は 2×π×(r+7/2)…②

②-①=6π

(2)

第aレーンは第1レーンの(a-1)メートル外側を走るので、2か所の半円部分の距離は2×n×{r+1/2+(a-1)}…③

③-①=2πa-2π

 

これは特に何も考えずに会話の指示通りに解けば解けますね。

むしろ会話が「思考」をする手間を省いてくれます。

しかもこの問題の悪いところは実は半径の値はどうでもよくて、「レーンの中央をは走るのでr+1/2」としてる部分をrで計算しても同じ値になります。せっかくの「レーンの真ん中を走る」って部分が意味を成してない、つまり正しい読解ができなくても正解してしまう問題なのです。

唯一会話の中に「2か所の半円部分を組み合わせた長さ」という部分から、ゴール地点が1周して直線部分にある事だけが「読解力」を要する部分なのですが、これを「思考力」というとそれは???です。

 

では私ならどう作るか。

会話文と設問だけいじります。会話の設定は先生と生徒に代えますね。

先生「直線部の長さはどのレーンも等しいからじゃあ、2か所の半円部分を組み合わせた円周の長さを比べて、その長さだけ調整すればいいよね。さっそく第4レーンを何メートル調整すればいいか計算してみてください。だたしどの走者もレーンの中央を走るとして考えてください」

生徒「半円の部分の半径の長さが分らないいので、測ってきてもいいですか」

先生「①半円部分の長さが分らなくても調整する長さを決める事はできるんですよ。ちょっと難しかったかな。では半円部分の第1レーンの内側の線の半径を10メートルとして計算してみてください」

生徒「できました。第4レーンを( ② )メートルだけ第1レーンより前になるように調整します。」

先生「では、今度は半径を15メートルとして計算してみてください」

生徒「あ!本当だ。今度も第4レーンを( ② )メートルだけ第1レーンより前になればいいと求めることができました」

 

問1 ②にはいる式を答えよ。ただし途中計算も書くこと

問2 下線部①となる事を証明せよ

 

思考力って何?

岩波書店の国語辞典で意味を調べると

「まわりの事態に応じて課題を解決していく力」とあります。

数学的な思考とは何か…それは「矛盾のない仮説を立てる」ことと「誰が見ても確かな結論」を出すことではないでしょうか。

したがって問題をまずは「実際の数値で仮説を立てる=矛盾のない仮説を立てる」(問1)

しかしこれはあくまで第1レーンと第4レーンとの間の限定的な条件で、しかも半径も10メートルと15メートルという限定的な条件です。

これを「どんな半径であっても」「どのレーンとの比較でも」成り立つことを証明する「文字式で一般化した式をたてる=誰が見ても確からな結論」(問2)

こんな構成にすれば思考力という題を満たすのではないでしょうか。

 

<解>

問1 

第1レーンの内側の線から半円部分の第4レーンの中央までの距離は3+1/2=7/2

したがって第4レーンの走者が走る2か所の半円部分の合計は2π(10+7/2)=27π…①

第1レーンの走者が走る2か所の半円部分の合計は2π×(10+1/2)=21π…②

①-②=6π

注)半径を第1レーンを10と第4レーンを13で計算してるものは不正解

問2

半円部分の第1レーンの内側の線の半径をr、比較するレーンを第aレーンとして

第1レーンの内側の線から半円部分の第aレーンの中央までの距離は

(a-1)+1/2=a-1/2

 

したがって第aレーンの走者が走る2か所の半円部分の合計は

2π{r+(a-1/2)}=2πr+2πa-π…①

 

第1レーンの走者は走る2か所の半円部分の合計は

2π(r+1/2)=2πr+n…②

 

第aレーンの調整する距離は①-②=2πa-2πとなり

式にrが含まれないため、第1レーンの内側の半径にに関係なく第aレーンの調整する距離は決まる(証明終了)

 

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