数学が出来なくなる大きな原因に「問題を解くための公式が必要」と思い込むことがあります。
これでは大学入試で勝負ができません。
「この問題はどの公式で解くの?」
「答えを見たらわかるけど、どうやったらこの公式を使うことを思いつくの?」
なんて思ってる子は大体が「公式が問題を解くために必要」と思い込んでいます。
もちろん公式は便利です。
しかしながら、公式に囚われると、その単元から脱することができません。
そして結果として最近の入試の流行である「単元横断型」の問題で手も足も出なくなります。
では例を使って説明していきます。

一見すると三角比、答えの形はベクトル。
おそらく高校生の80%はベクトルでアプローチをするでしょう。
ということで、まずはベクトルのアプローチ。
答えの形を含む公式は…
…①
これで右辺をそれぞれ求めればクリア。

cos∠BADは与えられてない!?
ベクトルから頭が離れない子はここでアウトですね。
ここで頭を切り替えれる子は、ベクトルから「cos∠BADを求める問題」を認識して三角比に移行します。
ちなみに半角の公式で求めますが、半角の公式を忘れてしまった場合「終わった…」となっているようではダメです。
目黒式では「加法定理のみ暗記→βをαに代えて2倍角の公式→変形して半角の公式」で教えています。
しかしそれさえ忘れた場合どうしましょう?ちょっと脱線するので、この点は後述します(注1)

これでゴールですね。
この問題のコツは、①でしっかりとゴール手前の形を作っておいて、あとは部分部分をそれぞれの単元で求めていくことです。
では、この問題、この問題はベクトルでしか解けないのか?
簡単に言えばこの問題はADの長さを求めればいいので、AD=Xと置いて三角形ABDで余弦定理を用いればもっとシンプルに求めれますよね。
問われ方がベクトルだからベクトルで解くという思い込みが思考を狭めます。
こちらが三角比で解いた解法

ちなみに連立せずに①だけで2次方程式を解くと2解出てきて、適当・不適当の判別をする羽目になるので、連立をすることを強くお勧めします。
では最後にこの問題でしかできない別解
「特殊な解法ほど簡単だけど汎用性は無い」これも数学の大事な考え方ですね。
別解がある時に人はつい簡単な方に飛びつきます。
しかし、それは汎用性がないから、よくない勉強ですよ。
(ちなみにダメな先生ほど美しい解を見つけた時にそれを自慢げに教えたくなり、それを勧めます。気をつけよう!)
この問題はBCの長さを求めた際にAB=BCの二等辺三角形であることに気が付けます
実はこれも相当大変です。ベクトルや三角比に頭が向いてると見落とします。
すでにBC=3と明記してますが、ここまで読んで下さった人も「あ!二等辺三角形!」って思わなかったでしょう。
訓練してない思考ってそんなもんなんです。
では、そこに気がつけば、高校1年生レベルでゴールイン。∠BAC=∠BCAなので

そうとうあっさりですね。
(注1)最後に途中で書いた半角の公式はおろか、半角の公式の求め方や加法定理すら忘れている時の対処。
実は、まだ勝負できるんですよ。

ということでまさかの角の二等分線の公式と三平方の定理で出せるんです。
角の2等分線が分らない時は…相似で角の二等分線の公式は求められますが、それくらい覚えてないと受験はやめましょう。笑。
ということで、一つの問題を題材に実はたくさん学べますね。
ここまでやって初めて1問吟味したことになります。
これが受験で戦える数学力を鍛える勉強なんです。
少しは「公式ありきの解き方」から解放されたでしょうか?
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