私は定期テストに置いて学習意欲を促す難問は大いに歓迎していますが、「100点を取らせまいとする行為」や「自分の教えたことを全て」とする支配的な作問は大嫌いです。
有馬中3年生理科大問8(4)
問題としては
亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムを加熱して化学反応をさせる実験。
まず、中学生の指導要綱を考えた時に指導すべき項目として
①気体の発生方法
②陽イオンと陰イオンが結合するイオン結合
③中和反応における塩の生成
④化合・分解・酸化・還元の主要な反応
ではなぜこの問題を悪問とするのか。
きっと学校で先生が「亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムを加熱したら窒素ができる」と教えたのでしょう。
生成方法を教えるまでなら…ぎりぎりセーフかと思いますが、化学反応式の出題はアウトだと思います。
化学反応式を使って、何を教えるべきなのか?
中学生への指導で求められるものはドルトンの原子説「化学変化では、原子と原子の結合の仕方が変わるでけで、原子自身が新たに生成したり、しょうめつすることはない」という部分を正確にイメージできることで、だから化学反応をモデルを使って教えたりするのではないでしょうか?
この問題はアンモニウムイオンをさらに分解しなくてはならない問題で、モデル化して教える事は難しい問題です。中学校においてアンモニウムイオン、硫酸イオンはそれ自体を分解する反応は教えても理解しがたいと思います。だから、教科書でもどの教材でもアンモニウムイオンや硫酸イオンを一つの粒として示しています。
批判だけするのも良くないと思うので、新大学入試・新学習指導要領に即した形で問題を考えると…
この問題は(3)を削って、ドルトンの原子説を示したうえで「この反応では窒素が生成しますが、他に発生するものは何か」という問いで思考させる問題であれば、良問だったと思います。
【生徒思考】
ドルトンの原子説によれば最初にあった原子は無くならないんだから
窒素・酸素・水素・ナトリウム・塩素がある。
原子を一旦イオンにして考え窒素以外で残ったものは
陽イオン:ナトリウムイオン 水素イオン
陰イオン:塩化物イオン 酸化物イオン
塩化物イオンと陽イオンの組み合わせは…
ナトリウムイオンで塩化ナトリウム
酸化物イオンで酸化ナトリウム…酸化ナトリウム??聞いたことないぞ。
じゃあ、酸化物イオンの相手は水素で…水になるな!
これで「俺が教えたことを暗記してるか!?」問題から、理科の法則を使って思考する良問へ早変わり
注)酸化ナトリウムは存在しますが、中学校では教えません。
今、大学入試接続改革に伴い、「どれだけ覚えたか」を学力とするのではなく、「どうやって使うか」を学力とする方向へシフトしています。
まさにその逆を行く「教えたことを暗記してるか」問題ですね。
今回のテストにもありました会話文に下線部と( )をつけた問題
最近よく出題されていますが、これを思考力問題と勘違いしてませんかね?
これは読解問題であり理科国語の教科横断型問題です。
こういう問題が定期テストで出題されるところをみると、やはり教育改革に公立の学校はついて行けなさそうですね。
うちの教室には私立中学生がたくさんいます。その子たちの受けている教育と、公立中学校の生徒が受けている教育の乖離に不安しかありません。
「富裕層は上等な教育を受けれる。」
これは憲法に定める平等権の精神に反しますね。
どうするんだ文科省!?
ちなみに、私は小3息子がいますが、もちろん私立へ行かせます。経済的に無理をしてでもです。
公立高校の教員をやっている兄も子供は私立に行かせると断言してます。
余談ですがうちの息子は塾無しですでに漢字検定6級、数学検定8級取得してます。
私は指導してません。ただ、カリキュラムと教材だけ与えてます。コツがあるんですよ♪
その辺の秘密は、ご来塾頂ければお教えします。
【蛇足】
ちなみに、窒素の生成は正確には違います。あくまで、結果として窒素は発生するというだけの反応で、正確な窒素の生成方法まで誤認させてしまう問題でした。
正しい窒素の生成方法
亜硝酸アンモニウムの濃い水溶液を約70℃で加熱。
NH₄NO₂→N₂+2H₂O
『三省堂 化学Ⅰ・Ⅱの新研究』卜部吉庸氏の著書より
亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムが化学反応を起こして亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムが生成します。
そして、生成した亜硝酸ナトリウムが熱分解を起こして窒素が生成するのです。
亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムの化学反応式。
これって中間生成物(亜硝酸アンモニウム)があるから式っていったいどうなるのか?
NaNO₂+NH₄Cl→NaCl+N₂+2H₂O
となるのかな?
なんかアンモニアソーダ法を1本の式にしたみたいな感覚で嫌ですね。
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