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2018年7月 4日 (水)

答えのない入試へ

高大接続改革もだんだんその内容が確定してきましたね。
まずは2020年にセンター試験が変わります。ここの段階ではまだ移行措置期間となり、それに合わせて中学校、高校と順次教科書改訂が行われます。

何度かここで書いてきましたが「入試に記述が入るようになるんですよね?」という解釈では大失敗します。

もっと根本の部分が変わります。

なぜセンター試験を変えるのか?
「教育を変えたいが現行のセンター試験がある以上はそれで高得点を取るための授業が展開され、教育能やり方は変わらない。だからとセンター試験を変える」とセンター試験を作っている大学入試センター長が仰ってました。


あまり漠然とした話では分かりにくいので「五.一五事件」を例に取り話を進めましょう。
本来の社会、特に歴史を学ぶ目的ですが、歴史から学び同じ事を繰り返さないためです。

一番最低限の知識としては
海軍軍縮に反対していた海軍将校が首相を暗殺して、海軍の発言力を高めた。
それにより、政府は軍部を制御できなくなり戦争へ進んでいく。
その反省から日本国憲法で、内閣を文民でなくてはならないと規定した。




では、現行の教育現場ではどうなっているか?
よく入試で問われるキーワードを教えて「これはテストに出るぞ~」といかにもな古典的な授業を行っているところもいまだにあるでしょう。
少なくとも、この事件に関して、詳細に主要人物、年号などを覚えるように指導していきます。

そのキーワードに関して検証していきましょう。
まずは前提として「歴史から学び同じ悲劇を起こさない事」が学習の目的と定義して検証していることをご了承下さい。

◆犬養毅
→事件の当事者なので覚える必要があります。首相であったことも大事です。

◆1932年
→日中戦争前くらいで十分ではないでしょうか。

◆憲政の常道
→犬養毅を語る上では必要かもしれません。

◆海軍将校
→陸軍であろうが、海軍であろうが、軍ということが認識できれば良くないでしょうか?

◆藤井斉・古賀清志
→豆知識レベルですね。不必要かと。

◆斉藤実首相
→軍人であったことをしっかり覚えねば。名前よりもそちらが大事。


入試で豆知識ばかり問う結果として文民統制までをセットで教えない。
なぜか文民統制は現社で習います。

これが、偏差値が60を超えるような大学で、どう出題されるかというと…



「以下の文に誤りがあるものを選べ。誤りが無い場合はオと答えよ」

ア)1930年(昭和5年)ロンドン海軍軍縮条約を締結した前総理若槻禮次郎に対し不満を持っていた海軍将校は若槻襲撃の機会を狙っていた。

イ)この事件の計画立案・現場指揮をしたのは海軍中尉であった藤井斉である。

ウ)首相官邸以外にも、内大臣官邸、立憲政友会本部、警視庁、変電所、三菱銀行などが襲撃された。

エ)この事件の後、元老の西園寺は元海軍大将で穏健な人格であった斎藤実を次期首相として奏薦した。

答え イ (藤井斉古賀清志)

この問題は私が作ったのですが、早稲田やMARCHの正誤問題はだいたいこんなレベルで出題されます。
しかし、藤井斉や古賀清志を覚えていたから、「その子は優秀だ!」って事なのか疑問です。
極論いうとこういう部分を是正するのが高大接続改革なんでしょう。



ではどう変わるのか。
あくまでこれは、私がいままで様々な場所で高大接続改革に関わる方たちの講演を聞いて、そう理解したものなので「絶対にこう変わる」と断言できるものではないのでご了承ください。


「日本が日中戦争や太平洋戦争をする事になった原因の一つを挙げ、その反省からその後日本が取った政策を答えなさい。」

解答例
五.一五事件で犬養毅首相が暗殺された事により、政党内閣は終焉を迎え、元海軍大将の斉藤実が首相に就任する。
それ以降開戦派の軍部の発言力は増して、戦争を避けることはできなくなった。
その反省から日本国憲法には内閣総理大臣および国務大臣は文民でなくてはならないと規定している。

これを答えれた子は、歴史を学ぶことで、問題と解決方法を考える事ができる、思考力・判断力を持った優秀な子であると言えるのではないでしょうか。

入試改革は今後も目が離せません。私もしっかり注視していこうと思います。

注)他にも戦争に突入した理由はあるので、解答は他にもあります。
この解答が複数あるというのも、新方式(思考型入試)の特徴の一つだと思います。

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