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2018年6月19日 (火)

学力低下の原因

先週の土曜日に息子の授業参観に行ってまいりました。
そこで行われていたことに驚いてしまいました。

小学校2年生の算数の授業でした。

黒板には教科書の問題が拡大されたA1くらいのカラーの紙が貼ってあります。
問題は2つの長さを比べるものです。

Hp32_2
先生は大きな定規を持ち
「どうやったらアの様な曲がった線の長さを測れると思う」
と質問しました。
この図の下には

ア □㎝+□㎝

イ □㎝□㎜ + □㎝

2つの長さの差は□㎝ - □㎝□㎜

私はこれってどうなの??と思って授業を見始めました。


私はこの時自分の小学校の授業を思い出しました。
おどろいたことに30年前の授業を明確に覚えていたんです。
これは、当時の担任の先生がいかに優秀だったかを物語っているんでしょうが、その授業はこれから中高の教育現場が導入するアクティブラーニングそのものだったのです。

当時の担任の先生は、まずは2つ離れた地点に長さの違う鉛筆を固定して「どっちが長いか定規を使わずに答えてください」と言い我々を席から立たせました。

私は指の長さと比較して2本の鉛筆を比べました。
友人がノートの切れ端で長さを測り取っていました。それ以外にも数パターンのアイデアが出ていたことを記憶しています。

私はこの比較をしている最中にノートの切れ端を使った比較の方が、正確に測り取れることに気が付いてしまったんです。悔しかった。

先生は最後に誰の方法が良いか手をあげてさせて理由を聞いて行きました。
この時、なぜか私の出した指で測り取るというのがベストアンサーになってしまうんですが、先生はあえて何が最も正確にできるかは言わず、「”長さを写し取る”ということが共通した意見でしたね」と言って授業を終えました。

ここでどんなことが起こったかというと
①私は自分の意見もあったが他者の意見と比較することによって、この問題の要点を掴んだ
②私は間違えに自ら気が付くことによって、このことを鮮明に記憶した。
③アイデアを出さなかった子は出した子のプレゼンを見ながら、自分の考えをまとめた


元々小学校の教育はアクティブラーニングなんです。
座学形式を限りなく少なくして、参加型授業を行う。

しかし、息子の学校の授業はどうだっただろうか。
まず、いきなりの道具指定。そして答えの枠。
確かに、子供たちはみんな手をあげて答えていて一見参加型ではあるのですが、これは誘導的過ぎて、子供たちが思考していないし、ここまで誘導しても手をあげない子はいる。その子に無理やり挙手や、挙手してないのに当てて生徒が黙り込む状態を作るのはいじめの助長の様な風潮もあり、学校の先生は避けねばならないようです。

私ならば

①クラスを4つの班に分ける
②発表者は事前に決める(なるたけ前回までの長さの授業でついてきてなかった子)
③箱に道具を入れておき、その道具でア、イの長さを測らせる
④測る方法を思いついた子は、自分で測らないで、他の子に口頭で指示を出し測らせる
⑤発表者が発表できるように、測定方法を再度説明し、発表者の子にも口頭指示で測らせる

☆箱の中身(全部使わなくても良い)
・三角定規 ・30㎝定規 ・メジャー(巻尺) ・セロハン ・紙テープ 
・分度器 ・コンパス ・トレーシングペーパー ・毛糸 ・はさみ
・サインペン 


きっと毛糸をア、イに当ててはさみで切って、2本の毛糸をそろえて同じ長さに切り、余った毛糸の長さを測る子もいるでしょう。

トレーシングペーパーにまずは図を写し取って、切り貼りをして、曲がっている部分を直線にする子もいるかもしれません。

ひょっとするとコンパスを使って…それができたらうちの息子にDSのソフト1つくらいかって与えますね。笑。

こうすることによってさまざまな手法が試されます。
こういう考える力を養わないと、たとえ小学校の早い段階で公文式や塾に通って勉強していて、その時は問題なくすすめていたとしても、高校生くらいで学習に行き詰ります。
それは、高校数学には丸呑みの限界があるからです。
呑みこめる中学校までの学習も、丸呑みせず論理を理解し、別解の可能性を模索し、色々なアプローチの練習をせねば、将来必ず行き詰ります。
私はその様な子を何十人、何百人と指導してきました。

今回の文科省の教育改革は「センター試験を変える」事が目的ではなく、「センター試験を変えることで波及効果的に高校教育、中学教育、そして小学校教育を変えていく」というものです。
ただその手法は、「指導方法を変えないと、その子は大学受験で失敗しちゃうよ」ってもので、私学は進学実績が大事なので変わるでしょう。
しかし公立はどうなのか?
特に大学受験にほど遠い位置にいる小学校の教育は…先生が関係ないってスタンスであれば、絶対に取り組まないし、取り組まなくて新たな教育に対応できない生徒を公立中学に送り出しても、その先生は一切責任は問われない。
それでは困るんですよ。
小学校の先生の仕事は子供の知的好奇心を育てる事です。


先日安河内先生は「これからの教員の役割は少し教えて、あとは作業をさせるというように変わっていきます」と仰っていましたが、まさにその通りだと思います。

今囁かれている教育2020年問題。
さて、今後の学校現場、どうなってしまうのか!

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